「てめぇ!何してんだ。こんなとこでよぉ」
「1年がいい度胸じゃねぇか」
「無視してんじゃねぇぞコラ!!」
その日、その生徒達は実に機嫌が悪かった。
彼等は、並盛中学校3年の不良にもなりきれなかったワル3人組。
放課後、風紀委員がある用事で周囲にいないのをいい事に、校門で、通る生徒、通る生徒、に絡む。
標的はおおよそ男。
しかも、顔が良い男子かスポーツができる男子がほとんどである。
そして、必ず、たくさんの荷物を抱えている男子である。
その荷物とは、
「はっ!!チョコレートなんざ、男の食いもんじゃねぇんだよ!!」
チョコレート。
今日は、2月14日。
バレンタインデーなのである。
ちなみに、風紀委員の“ある用事”とは、もちろん、下駄箱内のチョコレートの回収作業なのであった。
風紀委員の主張としては、下駄箱にチョコレートを入れるのは衛生上にも非常によくないし、見栄えが悪い。
風紀が乱れる――とのこと。
ひがんでいる訳では決してなく、風紀委員の前でなければ手渡しは黙認されているし、実際、風紀委員というのは意外にもてる。
顔にもよるが、忠誠心厚い不良達というのはある種の女性にとって、とても魅力的らしい。
さらに言えば、彼らのその忠誠心の先。――風紀委員長は存外に人気が高い。
彼に回収されるために、わざと下駄箱の使っていないところに彼宛てと称してチョコを入れておく女子生徒も少なくない。
もちろん、咬み殺されないように匿名で。
そして、この3人組の収穫はと言えば―――
「なんだよコイツ!!こんなにもらいやがって!!一個よこせ!」
くり返す。その日、その生徒達は実に機嫌が悪かった。
3人組がそろそろ、自分たちの行動に虚しさを覚え始めたころ、並盛中学校の校門前に一人の他校生が現れた。
きっちりと前をかった、軍服を思わせる特徴的な詰め襟。
真っ黒の革靴。
学校指定と思われる布製の鞄。
いかにも真面目そうな風体にはおよそ似合わない黒い薄手の皮手袋。
そして、一目で純粋な日本人でないとわかる、さらさらとした濃紺の髪と白い肌とオッドアイ。
悪名高い黒曜中学校に通っている生徒であることはすぐに分かった。
しかし、今の彼らにそんなことは全く関係が無かった。
その、“優等生です”と顔に書いてありそうな少年の持つエコバッグらしき袋の中。
大量の綺麗にラッピングされた箱やら袋やら。
3人組の苛立ちも気に留めず、少年はにこやかにあいさつして、
「すみません。会いたい人がいるんですが、他校生が学校に入るにはどうしたらいいですか?」
袋を持ち直しながら、小首をかしげた。
確かに、少年は“とても”とつけていい程綺麗な顔をしていた。
背も中学生にしては高すぎるほど高いが、細身で、けして大柄であるという印象は与えず、手足も長い。
いわゆるスレンダー美人というやつで、3人組とは、まず腰の位置から違った。
バレンタインデーのチョコレートの大漁はさることながら、日頃から下駄箱に大量の手紙が投函されているだろうことは明白だった。
むしろ、逆チョコ貰ってるんじゃないかと疑われるほどである。
例の3人組は、気に食わなかった。
非常に。
「会いたい人だぁ?」
「帰りが遅くなるって言っていたので・・・どこにいるかはおおよそ検討が付いているんですが」
凄んで見せるが、少年は怖がりもせずにこにことしている。
はっ、知るかよ――と一人が少年の腕をつかんだ。
「・・・っ・・痛いんですが」
「そんなに入りたきゃ入りゃいいじゃねぇか」
グイッと掴んだ腕を乱暴に引き寄せる。
少年が痛みと不快さに少し顔をしかめた。
なかなかいい顔をする――と思った瞬間、
「あ、キョウヤ―――」
少年が、腕をつかんだ男越しに誰かを見つけ、声をかける。
キョウヤ?―――
それが誰だか思いつく前に、
「ちょっと・・・その汚い手を離しなよ」
鈍い衝撃とともに身体が吹っ飛んだ。
「な・・・」
残りの二人が驚愕の声を上げるなか、学ラン姿が跳躍した。
一撃。
たったの一撃で2人を昏倒せしめた学ラン姿の少年。
その登場に、一気に周りの空気が冷える。
周りの生徒がざわつくことすらできないでいるのも気に留めず、学ラン姿の少年は黒曜中の生徒の方へ向き直った。
「やあ。骸。何その優等生みたいな格好。釦、かえるんじゃない。ふざけてるの?」
「クフフ。これが今の僕のスタイルですよ。忙しそうですね。恭弥」
雲雀恭弥と六道骸。
骸の存在を知る者はあまりいなかったが、雲雀を“恭弥”と呼んでいる段階で相当な脅威だった。
周りの空気お構いなしに、2人の間の空気だけが和やかなものになっていく。
「何。君が並盛に来るなんて、どういう風の吹きまわし?」
「あの、ですね。実は・・・」
そう言ってから、黒曜生――六道骸は、学ラン姿の少年――雲雀恭弥を手招いた。
「何」
小首をかしげながらも、手招く骸に近づく。
そして、雲雀が並盛中学校の校門を一歩出た瞬間、
「コレ。バレンタインのチョコです」
綺麗にラッピングされた箱を取り出して雲雀に差し出した。
バレンタイン・チョコ。
この、並盛中風紀委員長・雲雀恭也に。
手渡しで。
しかも、どう見たって男である。
周りの空気がさらに冷えたのは言うまでもない。
「・・・バレンタイン・・・」
「恭弥は、風紀が乱れる――とか言って色々気にしそうだったので、校外で渡そうと思いまして」
「ナルホド。そういうとこはしっかりしてるね」
「はい。僕お勧めの会社のチョコレートにしようかとも思ったんですが、やっぱり手作りにしました!」
「手作り・・・」
食べて大丈夫なの?――と雲雀が冗談しかめて聞く。
あ、雲雀さんって冗談言うんだ――という声にならない声が周囲に広がる。
「し、失礼ですね!!僕のお弁当毎日食べてるくせに!!」
「「「お弁当!?」」」
周囲の生徒の合唱。
しかし、雲雀はそんな生徒達に一瞥もくれずに骸から箱を受け取ると、優しく骸の頬にキスした。
「まってなよ。すぐ仕事を終わらせてくるから」
「はい」
今度こそ、驚愕の絶叫が大合唱になってあちこちから飛び出した。
しかし、雲雀は全く周囲など存在しないかのように軽く骸に手を振って再び校内に入り、骸も周りの悲鳴など聞こえていないかのように大きく手を振って雲雀を送り出した。
その足元で、バレンタインデーなんて大嫌いだ――と心の中で叫ぶ負傷者3人組がいたのであった。
急いで書いたため、意味不明になったVDネタ。
兎に角、この二人には、周りをビクビクさせながらひたすらイチャコラして欲しいのです。
因みに、小説内では“恭也”と呼ばせましたが、個人的には“雲雀君”の方が好きです。
(凄くどっちでもいい)
恐怖の権化(?)な2人でバカップルさ加減を見せつけて、
さらに周りを怖がらせる――みたいな図が好きです。(ヲイ)
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