僕は、自分に似た人間が大嫌いだった。
自分と同じような成分表が出来上がりそうな人間ほど、咬み殺しておきたかった。

同族嫌悪――

人はよく、僕らの事を似ているという。

思えば、僕は彼の事が嫌いだった。













彼は、愉しそうだった。
何時でも、何処でも、どんな状況かでも、彼は愉しそうな微笑を湛えて、そこに立っていた。
愉しそうだが、少しも楽しそうでなかった。

微笑、苦笑、嘲笑、自嘲。

彼の他の表情を、僕はあまり見たことが無い。

驚いた表情も、憎悪をたたえた瞳も、何もかも忘れてしまったかのような無表情も、
一瞬の間に訪れる微笑によってかき消されていく。

何を考えているのかよくわからない男―――彼はそれを纏ってそこに立っていた。



だから――



「・・・・どう、したの」

その時、僕は、如何したらいいのか分からなかった。

深夜の並盛の公園。

「どうかしましたか?」

彼は、僕の問いに不思議そうに小首を傾げた。
例の微笑をたたえたまま。

僕は、少し考えて、もう一度、彼の顔を見て、

「目」

とだけ言った。

目?――と訝しげな表情を一瞬浮かべて、それから、彼は手を目元に持っていった。

「あ・・・」

驚いたように自分の手を見つめている。

僕らは、今の今まで、殺し合いをしていたはずだ。
人の目にどう映ったかは別として、僕らは愉しんでいたはずだった。
彼と戦るのは3カ月ぶりで、彼と話をするのも久しぶりで。
僕らは、本当かどうかは別として、少なくとも思い込んではいた。

自分から、この行為を差っ引くと、何も残らない、と。だから。


僕らにはこの行為が必要だった。


「君。なんで、泣いてるの」


だって僕らはとても似ているのに。


彼が、少なくともそれを流すに足るほどの理由。
彼が、必死に目元を手で拭うに足るほどの原因。

彼は、答えもせず、自分の瞳から流れる水滴と戦っている。
袖の血の付いていないところを探して、止まらないその水滴と戦っている。
その顔が、困惑、焦燥、戸惑い――と変化して、

「どうして・・・でしょうね」

結局彼は、それと戦うのをあきらめた。
後から後から零れおちる、手に着いたそれを、疎ましそうに見つめた。

「まぁ、そのうち止まるでしょう」

最終的に彼の選択した表情は、いつもの表情だったけれど。
赤いほうの瞳からそれが零れおちるままにしたままのその表情はとてもきれいで。



どうしようか―――



僕は、自分に似た人間が大嫌いだった。
自分に似た成分表が出来上がりそうな人間ほど、消してしまいたかった。

同族嫌悪。

人はよく、僕らの事を似ていると言うけれど。

僕と、君に、似ているところなんて、いくつあるだろうか。

その、何もかもを隠したような頬笑みですら。





「六道骸」
「・・・・なんですか」
「   」
「え?」




彼のその驚いたような、戸惑ったような表情は、きっと、いつものようには消えないだろう。







僕は、自分に似た人間を嫌いになる人間だった。

人は、僕らの事を似ていると思っているようだけど。



「僕は、君が、とても――」



思えば、僕と彼に似ているものなんて一つもなかった。
















困る。
何がって、雲雀様が。
実は、先に書いたのはこっちで、シリーズにしようと思ったので1を書いたというオチ。

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