「愛しているよ、せつら」
想い人の家の六畳間で、メフィストは楽しそうに微笑んだ。
「あ、そ」
対するせつらの声は、いつものようにそっけない。
「本当に連れないな、君は」
「正直なだけだよ」
プイ、と顔を逸らすせつらを、メフィストは愛おしそうに見つめる。
「それが、正直な気持ち、かね?」
「そうだよ」
「本当に?」
「しつこい」
何が言いたいんだよ、とせつらは、クスクス笑う恋人を茫と睨んだ。
「言葉は連れないくせに、ちゃんとお付き合いしてくれるというのは、どんな気持ちかね?」
「どんなって…」
「せつら、何故君は、私の恋人なのだね?」
「……」
「せつら、君は私の事を、どう思ってくれている?」
「知らない」
せつら――と、想い人の名を呼ぶ声には、僅かな硬さがあった。

「私の事を、愛してくれているのかね、せつら?」

「おい」
せつらの視界は、月光の輝きを持った恋人の顔ばかりになった。
その背後には、見慣れた部屋の天井。
「どけ」
「どかぬよ」
――答えてくれるまでは
漆黒の髪がさらさらとせつらに降りかかる。
「一度だけでいい。君の気持が聴きたい」
「聞いて、どうする」
「――確かめたい、のかもしれぬ」
自分でも初めて気付いた、と言うように、メフィストは自嘲的な笑みを浮かべた。
「下らない、かな?」
「うん」
「そう、かもしれん。だが、確かめずにはいられない」
メフィスト、とせつらは白い手を彼の頬にそっと添えた。
「お前がいう、愛しているとか、好きだとか――それがお前の本当の気持ち?」
「・・・?」
「ねえ、メフィスト。お前が僕に抱く感情は、そんな安い言葉で片付くの?」
「せつら?」
「僕は、そんな言葉じゃ収まらない。収まる言葉を、僕は知らない」
――だから、言わない

せつらは、メフィストの頬から肩へと手を移した。
軽く力を籠めれば、白い身体は素直にいう事をきいた。
よいしょ、と自身も身体を起こし、メフィストに向かい合った。
恋人は俯いたままで、美しい顔は黒絹に隠れている。
「それでも…」
黒絹の奥から、小さな呟きが漏れてくる。
「それでも私は聴きたい。私とて、そんな言葉では尽くせぬ程、君を想っているよ
 けれど、想っているだけでは伝わらない。――だから、私は、幾度となく君に伝えたい」
―― 一言で足りぬのなら、幾度でも。

「伝わる事も、分からぬ事も、今の私には耐え難いのだよ」

メフィストは、ゆっくりと顔を上げた。
黒水晶が哀愁を含んで、せつらに向けられる。
漆黒の麗人は、やわらかな笑顔を浮かべた。

「絶対に、言ってやらないよ」




尊敬する陸さまのお誕生日に描いたハピバ絵作成中に、2人が動き出したので書き留めたもの(?)
散々ツイッターとかで「せつメフィ!」と騒いでいる割に、どっちでも良いってなんだ!

(烏兎的に)可愛ければそれでよし!
というか、最終「なんだよ、結局おまいら好きなんぢゃん!」で、全て良し!!




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