「よ。藪医者」
院長室の扉をノックもせずに乱暴に開けたせつらだったが、内心では大いに焦っていた。
開ける前に、何度も深呼吸してから意を決して入った筈だったが、その“意”も硝子のように脆かったようだ。
兎に角、この動揺がばれぬようにと必死に平常を装って、せつらは想い人の城へと足を踏み入れた。
「…何かね?今日は診察日ではあるまい」
隠しきれない動揺を誤魔化すように、足元に視線を落としたまま、彼の言葉を聞いていた。
「…まーね」
月光のような声に、それだけ応えるので精一杯だった。
「怪我でも?――見た所、残念ながら正常に見受けられるが?」
何時も通りの「医者」としての言葉ですら愛おしく思えてしまうのは、もう重症なのだろう。
「お陰さまで」
「では?」

そう訊かれて、言い訳でしかない小さな紙袋を、ガサガサとわざと大きな音を立てながら差し出した。
「…差し入れ」
「…ほう?」
「…なんだよ」
「ヤケにサービスがいいな。何か企みでも?」
からかう様に言いながら小首を傾げる姿に、思わずドキリとする。
「そんなに嫌なら返せ」
顔が赤くなった気がして、慌ててフイと顔をそむけた。
「有り難く頂戴する」
それは、寧ろこちらの台詞のようにも、せつらには思えた。
「……じゃあね、メフィスト」
一体、どれだけ機会を無駄にすれば気が済むのだろうか。
仮令、叶わぬ想いであったとしても、どうしてもこの想いは止められぬ。
「ああ、せつら――」
背中で閉まっていく扉に、せつらは今度も結局伝えられなかった言葉を呟いた。







大好き―――














100に続き500hitまで踏んで下さった伯さまからのキリリク。
「せつメフィで、何か幸せな感じ」と言うことでしたが・・・

なんか――これからだろ。。。
まあ、今後の2人を妄想してもらうという事で・・・(汗)

伯様。こんなんでよろしかったら、お受け取り下さい。


Back(Novelへ)